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2015年01月30日 (金) | Edit |
遠くの声に耳を澄ませて / 宮下奈都



人生の岐路に立つ人々を見守るように描く、12編の短編集。

一つ一つ丁寧に描かれている短編集です。
主人公たちが、皆それぞれ自分の信じる生き方をしていて、けれど悩み模索する様子が伝わります。どのお話も良かったです。
本来、私は短編集が苦手です。短いお話が終わるたびに、気持ちをすぐに切り替えて読むのが苦手だからです。
けれどこの本は、一つのお話のページ数は少ないのですが、どのお話にもスッと入っていけ、それぞれの主人公たちの気持ちもちゃんと伝わってきます。
進むにつれて、少しずつ話が繋がっていくことや、登場人物が所々でリンクしているので、もう一度そこを読み返したり、違う一面も見れたりするのが楽しかったです。

特に印象に残ったのは「白い足袋」の咲子のお母さんの言葉です。
今の生活レベルってどんなんやの。電気がほんとにそんなに要るんか、ほかに方法はないんか、考えたことあるんか
まじめに働く漁師に未来がないなら、この国にも未来はないわ
海で暮らしてるもんから海を取り上げる権利が誰にあるんや

主人公たちは皆、地味なのですが一生懸命に生きています。怠惰にならず、自分の出来ることを頑張ろうと思わされる作品でした。
やっぱり宮下さんの作品は素晴らしいです。

2015年01月27日 (火) | Edit |
よう知らんけど日記 / 柴崎友香



東京で暮らす著者が大阪弁で綴る日々のあれこれ。最近読んだ小説やハマッたテレビ番組、興奮したライブや展覧会、大阪と東京のカルチャーギャップなど、フツーな小説家の日常を、のんびりした大阪弁で綴ります。

ゆるくて面白いエッセイ集です。
独り言のようなぼやきがいいですね。
気楽に読めるのですが、時々へぇ~と思う情報も散りばめられていて、なかなか楽しいです。
けっこうテレビ見てるんですね。作家さんは、為になるような番組ばかり見てるんだなぁ~と感心しました。
関西に住んでるのと年齢も近いので、分かる分かると共感したりすることも多くて、親近感わきました。
椎名林檎さん…私も見るたびに、あれっ?となってしまうんです。見るたび雰囲気が違ってるような気がして…(^▽^;)
柴崎さん、すごくフランクな感じの人柄なんですね。
また日記の続きが読みたいです!

2015年01月24日 (土) | Edit |
ロマンス小説の七日間 / 三浦しをん



あかりは海外ロマンス小説の翻訳を生業とする、28歳の独身女性。ボーイフレンドの神名と半同棲中だ。中世騎士と女領主の恋物語を翻訳しているところへ、会社を突然辞めた神名が帰宅する。

主人公のあかりの現実と、翻訳中のロマンス小説が交互に進んでいくという、しをんさんらしい独特のストーリー展開です。
ロマンス小説にはまっていた時があったので、どうしてもワンパターンな展開になってしまうことに、そうそう、うんうんと頷きながら、あかりの気持ちも分かるなぁ~と思いながら読み進んでいました。
途中、ヒーロー役のウォリックのありえない展開に「えっ?そんなバカな……」と、真剣にびっくりしてしまいました。
その後、えっ?創作しちゃったの?
ハッピーエンドが鉄則のロマンス小説では、絶対にないストーリー展開でしたが、創作しちゃった方の物語もあれはあれでちゃんとハッピーエンドでしたね。
一冊で2つの物語を楽しめてお得な感じです。
翻訳の裏話なども面白かったです。
しをんさんはロマンス小説も書けちゃうんですね。

2015年01月21日 (水) | Edit |
リレキショ / 中村 航



「弟と暮らすのが夢だったの」という姉さんに拾われて、彼女の弟となった19歳の「僕」。新しい名前は「半沢良」。面接用に書いた「半沢良」の履歴書に物足りなさを感じた「僕」は、真っ白な紙にもうひとつの「リレキショ」を書き上げる。

第39回(2002年)文藝賞受賞作品です。

不思議な雰囲気の小説で、すぐにお話の中に引き込まれました。
ちょうど私も履歴書を書いたばかりだったので、親近感も湧きました。
主人公の半沢良、姉さん、山崎さん、ウルシバラさんなど、登場人物が独特な魅力があり好感が持てます。
「半沢良」となった彼は「半沢良」として普通に真面目に生活し始めます。
謎だらけで、掴み所のないようなお話ですが、読みやすいです。
読み終わった後はスッキリ……ということはないのですが、爽やかで心温まる作品です。

2015年01月19日 (月) | Edit |
動物学科空手道部1年高田トモ!
/ 片川優子




将来は動物に関わる仕事がしたい、トモはそう思って大学を決めた。「いっさい女らしさを捨てる」「一つのことをやりきる」と心に誓い、空手道部にも入部する。

執筆当時の著者は、獣医学科で空手部だそうです。

今まで女らしいお姉ちゃんが全てだったトモが、ある出来事をきっかけに、「お姉ちゃんみたいにはならない!」と心に決め、大学に入学し一人暮らしを始めます。
部活を頑張り、恋愛し、友達と飲み会をしたり、色々悩みながらも大学生活を満喫しています。
トモはとにかく一生懸命で、素直で、不器用なところもあったりして……楓くんのことは残念でしたが…。
リアルな大学生活が綴られています。
今後、どうなるのでしょう?続編もあるようです。

2015年01月14日 (水) | Edit |
学校のセンセイ / 飛鳥井千砂



センセイって、もっと特別な人がやるものだと思っていたが、とくにやりたいことがなく気がつけば先生になっていた。生徒は可愛げがないし、同僚とのつきあいも面倒だ。それでも“センセイの日々”は続いて行く…。

前に読んだ「はるがいったら」が良かったので、次はこの作品を読んでみました。

桐原一哉は大学を卒業後、地元埼玉で塾講師をしていましたが、教員採用試験を受け、名古屋の私立高校のセンセイになりました。
教師になって2年目、面倒くさがりの桐原は、ソツなく仕事をこなし、いつでも冷静です。
面倒くさがりの私は、共感する所がありましたが、そもそも本当に面倒くさがりの人は学校の先生にならないと思います。なので、桐原は根は面倒くさがりではないのでしょう。

名古屋が舞台です。
何年か名古屋に住んでいたことがあるので、独特な名鉄・名古屋駅のホームや、「でら」という言葉をけっこうみんなが普通に使ってることに驚いたことを久しぶりに思い出しました。

先生や生徒、桐原の友達など様々な人たちが登場し、みんな周りにいそうな人たちで読んでいて飽きないです。
先生らしい溝口先生や、生真面目すぎる永野先生、奇抜なファッションの小枝など、好きな登場人物も多いです。
永野先生が毅然とした態度で、生徒を注意する場面も良かったです。
読後感も良かったので、また飛鳥井さんの小説読みたいです!

2015年01月12日 (月) | Edit |
メッセージ 魚住くんシリーズ Ⅲ / 榎田ユウリ



読む前に「シリーズ最大の衝撃的展開が訪れる!」という宣伝文句を見てしまい、一気に心配になりました。
何が起こってもいいように、心構えをしてドキドキしながら読み始めました。
最初に、魚住くんが小児病棟に行くという所から始まり、物語的に悪い予感しか起こりません。
けれど想像したものより悪い結末でした。
確かに衝撃的でした。

あいつは強いんじゃない。鈍いの。鈍くないと生きてるのがしんどいから、あえて鈍くなったのよ
マリの言葉が印象に残ります。
今回、マリの存在の心強さを感じました。
マリと濱田が、魚住くんのマンションに向かう場面は本当にハラハラしました。

いつまでもわかんないふりしてんじゃないわよ
事件の後、マリが久留米にピシャリという所は、ちょっとスカッとしました。

魚住くんが、悲しい時に泣くことができるようになり、太陽のようだった養父母のことを思い出すこともできるようになり、祖父母もとても優しい人だったので救われたような気持ちになりました。
「メッセージ」すばらしい題名です。

今回は、悲しいことがあったお話だったので、ラストで久留米に「理性の崩壊」が起こり、楽しい展開があって良かったです。
続刊発売の3月が本当に待ち遠しいです。


2015年01月11日 (日) | Edit |
プラスチックとふたつのキス 魚住くんシリーズ Ⅱ
/ 榎田ユウリ




ゆったりと物語は進みます。

表題作の「プラスチックとふたつのキス」は、日下部貴史の登場でハラハラしました。
日下部先生に幸福行きを誘われた時、久留米が反対方向からでかい声で「魚住、おまえも来いよ」と呼んだ。久留米が呼んだから、日下部先生とは行けなかった。このエピソードが好きです。
久留米が、他愛もなく、魚住くんの両手を解放した場面も好きです。
なんだか、緊迫した場面も、久留米が登場すると全く空気が変わるんですよね。

「ハッピーバースデーⅠ」は、ちょっと泣きました。
誕生日がきて「おめでとう自分」と思えるようになった魚住くん…良かったね。

彼女のWine,彼のBeer」も好きです。
だって絶対死ぬんだから。そしたら、自分に嘘までついて、周りに合わせる必要なんてないよ
魚住くんがるみ子に言った言葉です。
最初はとんでもない女の子が登場してきたなぁと思いましたが、話が進むにつれてるみ子のことが好きになりました。
バカな女を演じることをやめ、そのままの自分で生きることを決めたるみ子に、すがすがしい気持ちになりました。
ラストで「意外でしょ?」と言うるみ子に「そうか?」と答え、自然に「教えてくれないか?」と言える久留米がいいですね。
こういう所が、モテるんでしょうね。さすが、あの魚住くんが好きになった男ですね。
酔っぱらった魚住くんが、久留米にからむ場面も面白かったです。
普段、あんな怒った口調をすることがないので、新鮮です。
このお話では、魚住くんが赤面する場面もあり、なかなか貴重ですね。

月下のレヴェランス」ではサリームが語ります。
知らなかったのでレヴェランスの意味を調べました。バレリーナたちが舞台で踊り終わった後に行うお辞儀のことだそうです。
なるほど!の題名ですね。

なんだか色々と考えさせられてしまう内容のお話が多く、苦しい場面もありますが、なんだかんだと魚住を放っておけない久留米に癒されました。
次巻、楽しみです☆


2015年01月10日 (土) | Edit |
この女 / 森 絵都



大阪・釜ヶ崎。日雇い労働で生活する貧しい青年・ 礼司は金持ちの妻の人生を小説に書けば三百万円もらえるという怪しげなバイトを引き受ける。だが彼女が語る過去は辻褄の合わないデタラメばかり…。

森さんの今までの小説とは、雰囲気がまるで違います。
こんなお話も書いていたんだと正直驚きました。作風の幅広さと力量を実感する作品でした。題名からは予想できないストーリーで読み応えがありました。
物語の途中や、読み終わってからも、プロローグを何回も読んでしまいました。

なぜ、二谷結子は過去を語らないのか?
そもそも、なぜホテルチェーンのオーナー・二谷啓太はこんな依頼をするのか?
そして、小説も書ける優秀で若い礼司が、なぜ釜ヶ崎で日雇い労働者として働いているのか?
大輔は家に戻らず、一体何をしているのか?
色々な謎が気になり、次々とページを捲ってしまいます。

「あいりん地区」という名称は、ニュースや新聞などでよく見聞きしますが、これまであまり理解していませんでした。
その独特な場所を舞台に選んだ森さんは素晴らしい作家です。
釜ヶ崎で働かざるを得なかった礼司の再生の物語でした。
とても良い作品でした。

2015年01月08日 (木) | Edit |
星間商事株式会社社史編纂室 / 三浦しをん



29歳で独身、腐女子の川田幸代は、社史編纂室で仕事をきっちり定時内にこなし、趣味の同人誌作りに邁進する日々を送っていた。ある日、この会社の過去に何か秘密があることに気づいてしまう。

幸代は仕事が出来るのですが、プライベートの時間を減らしたくないという理由で出世の道を断り、社史編纂室に移動になります。
社史編纂室は左遷された人たちが集まる、やる気のないゆるい部署です。

同人誌作りやコミケなど、よく知らないので新鮮でした。
幸代にとって、余暇の全てを費やす趣味の同人誌作りは生きがいなのですね。
けれど、ずっと共に同人誌を作ってきた十年来の友人が、結婚を機に同人誌作りを抜けると言いだします。
同棲中のふらっと長期の旅行ばかり繰り返している恋人との関係に悩み、結婚を意識しだしたりと、将来の不安や焦りなどの幸代の複雑な心境がリアルに描かれています。

物語の途中で、幸代が書いたBL小説や、課長が書いたエセ時代劇調の小説などが所々にはさまれ、全体的にコミカルな雰囲気です。
変わったお話でしたが、しをんさんの文章なので読みやすかったです。