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2015年03月07日 (土) | Edit |
春にして君を離れ / アガサ・クリスティー



優しい夫、良き子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていたが、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…。

推理小説ではないアガサ・ クリスティーの本があることを知り読んでみました。
ほとんどが主人公・ジョーンの回想の場面ですが、巧みに引き込まれます。
ジョーンは決して特別な人間ではありません。
優しい弁護士の夫を持ち、三人の子供に恵まれた、裕福な家庭のどこにでもいる主婦です。
最初はジョーンのことを、自信過剰で自己中で、人の気持ちの分からない女性だなと思いながら読んでいました。
けれど読み進めていくうちに、もしかして自分もそうなのでは?自分では気づいてなかったけれど、そういうことがあったのでは?と過去を振り返り考えてしまいます。
誰もが自分の都合のいいように解釈するし、不都合なことには気づかないふりをしたりします…そうしなければ生きていくのが辛くなるから。
自分と向き合うより、気づかないふりをして生きていく方がずっと楽に生きていける……。
弱くて嫌な自分を見つけてしまう……そんな恐ろしい本です。

そしてロドニーのことが、ずっと気の毒だと思って読んでいたのですが、ラストまで読むとちょっとゾっとしました。
農場をしたいなら、結婚前に言うべきでした。もし言ったなら、ジョーンの性格からして結婚しなかったでしょうに。
望む仕事をすることができなかったロドニーの復讐のように感じました。

ジョーンは結局、何も変わらなかったけれど、そこがまたとてもリアルに感じました。
そうそう人間て変われるものじゃないです。

アガサ・ クリスティーを読むのは初めてでしたが、さすがギネスブックで「史上最高のベストセラー作家」に認定されている作家さんです。
少し恐くて、現実的な…素晴らしい作品でした。
中村妙子さんの訳も素晴らしいです。
他のアガサの作品も読みたくなりました。